古い小説を開くと、知らない言葉が次々に出てくる。一つずつ調べているうちに、誰が何をしていたのか分からなくなる。だからといって、全部飛ばすのも落ち着かない。
どこまで辞書を引くべきかに、全員に共通する正解はありません。ここでは、物語を追うために今必要な言葉と、あとで楽しめる言葉を分ける読み方を紹介します。速読や暗記の訓練ではなく、読書を続けるための工夫です。
分からない箇所を、まず三つに分ける
| 困っていること | 最初に試すこと |
|---|---|
| 文字の形が見慣れない | 図書カードの文字遣いを確かめる |
| 単語の意味が分からない | 前後を少し読んでから、必要なら辞書を開く |
| 誰の行動か分からない | 人物名や主語、場面の切れ目へ戻る |
単語を引いても場面が分からないなら、原因は語彙以外にあるのかもしれません。逆に、話の流れは分かるのに一つの漢字で止まっているなら、そこだけ確かめれば先へ進めます。
すぐ調べたいのは、行動や関係が変わる言葉
その語を飛ばすと「誰が誰に何をしたか」が分からなくなるなら、今調べてください。断っているのか頼んでいるのか分からない会話も、その一つです。
たとえば『舞姫』の冒頭は、今とは違う文体で船の様子を描いています。知らない単語を一つずつ引く前に、文の終わりと場面を確かめてください。文語の助動詞は、名詞と同じ引き方では見つからないこともあります。1
『舞姫』を初めて読むためのガイドでは、冒頭の文を区切る入口を示しています。
あとで確かめてもよいのは、場面を見失わずに読める言葉
植物や食べ物、着物の細かな名前が分からなくても、何をしている場面かはつかめることがあります。そんなときは、段落を読み終えてから戻れば十分です。
『檸檬』には街の店や商品、色や匂いに関わる言葉が現れます。すべてをその場で調べるより、語り手が何に引かれたかを追い、あとで気になった物を一つだけ調べるほうが、作品の流れを保てます。2
もちろん、道具や食べ物を調べること自体が楽しい日は、寄り道をすればよいのです。調べないほうが上手な読者、というわけではありません。
人名・地名は、辞書の説明より関係が役立つこともある
歴史小説や古い長編には、たくさんの名前が出てきます。その場で人物の生涯を調べると、まだ読んでいない展開まで知ってしまうことがあります。
まずは本文で分かる役割だけを短くメモしてください。「主人公の知人」「この場面で訪ねてきた人」「今いる宿の名前」程度でも、再登場したときの手がかりになります。
読み進めて役割が変わったら、メモを書き直します。最初から完成した相関図を作ろうとせず、読んだ範囲の理解を少しずつ広げていきます。
辞書の最初の意味だけで決めない
一つの語に複数の意味が出てきたら、前後の文に戻ってみてください。人物が冗談を言っているのか、物の名前として使っているのか、気持ちをたとえているのかで、当てはまる説明が変わります。
辞書で見つからないときは、語の区切りや表記を見直します。ただし、本文の文字を自分で「正しいはずの語」に直して読む前に、原文の表記や図書カードの注意書きを確認してください。
旧字旧仮名については、『檸檬』で見比べる表記のガイドがあります。新字新仮名を選んでも、古い語彙がすべてなくなるわけではありません。
BlueReaderの辞書は、必要なときだけ使える
BlueReaderのポップアップ辞書を有効にしているときは、PCでは単語をダブルクリック、モバイルでは長押しして開きます。辞書は設定で無効にすることもでき、辞書内の文字サイズを本文とは別に調整できます。3
「今日は物語を続けたいから辞書をオフにする」「気になった箇所を調べるときにオンにする」という使い分けができます。ただし、すべての古語・人名・活用形に説明があるわけではありません。
設定画面の詳細はBlueReaderの辞書機能の紹介をご覧ください。この記事では、操作よりも読書の途中での使い方を扱っています。
一段落だけで試す、無理のないやり方
まず一段落を読み、何が起きていたかを一言で言ってみます。言えない原因が一つの語なら、その語を調べます。言えるなら次へ進み、気になった言葉だけあとで戻ります。
読み終えたあとに全部の語を覚えている必要はありません。同じ語にまた出会ったとき、少し見覚えがある。その積み重ねで十分です。
まずは、自分が続きを読みたい作品を選ぶ
辞書の練習に向いているという理由だけで、気の進まない作品を選ぶ必要はありません。短編でも長編でも、次の場面が気になる本のほうが、言葉を調べる動機がはっきりします。
青空文庫の本文はブラウザで読めます。BlueReaderへ持ち込むなら、テキストZIPを青空→EPUBで変換し、EPUBをアップロードしてサーバー解析後に開きます。変換の手順はこちらのガイドにまとめています。4
物語を追いたい日は先へ進み、言葉を味わいたい日は辞書を開く。その日の気分で読み方を選んでください。
次の読書につながる記事
Footnotes
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森鴎外『舞姫』、青空文庫。本文、図書カード No.2078。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩
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梶井基次郎『檸檬』、青空文庫。本文、図書カード No.424。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩
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BlueReader・ポップアップ辞書の紹介。PCのダブルクリック、モバイルの長押し、設定による無効化、辞書文字サイズの変更。 ↩
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BlueReaderの青空文庫EPUB変換ガイド。青空→EPUBによる変換、EPUBのアップロードとサーバー解析、同じアカウントでの読書継続について。 ↩