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EPUB READING GUIDE

青空文庫の人気作から選ぶ、最初に読みたい短編7選

青空文庫で何を読むか迷ったら、まず短い一作品から。『蜘蛛の糸』『手袋を買いに』『注文の多い料理店』『檸檬』『鼻』『羅生門』『高瀬舟』を、ネタバレなしの読みどころと気分別の選び方で紹介します。

青空文庫で読書を始めたいけれど、長い小説を読み切れるか少し心配。それなら、短い物語を一つ選ぶところから始めましょう。

この記事では、青空文庫の2022年通年・XHTML版アクセスランキングを参考に、7作品を選びました。いずれも同年の上位31位以内に入っています。ただし、並びは現在の人気順でも、短い順でもありません。1

『蜘蛛の糸』『手袋を買いに』『注文の多い料理店』『檸檬』『鼻』『羅生門』『高瀬舟』を、結末を明かさずに紹介します。題名は知っていても本文は読んだことがない、という方も、気になる一作の冒頭から開いてみてください。

いまの気分から、最初の短編を選ぶ

次の表は、本文をもとにした選び方の提案です。読書にかかる時間は、語句を調べるか、立ち止まって考えるかで変わるため、分数の目安は載せていません。

いま読みたいもの候補読むときの手がかり
場面の鮮やかな切り替わり『蜘蛛の糸』2静かな風景と、切迫した気持ちの対比
小さな冒険と、親子のやりとり『手袋を買いに』3母親の心配と、子どもの好奇心
先が気になる、少し怖い話『注文の多い料理店』4案内の言葉を、人物たちがどう受け取るか
色や匂いを味わうような文章『檸檬』5一つの果物と、語り手の感覚
人の自意識や、周囲の視線『鼻』6気にしないふりと、本当の気持ち
緊張感のある、人間の選択『羅生門』7行き場のない人物の考えの揺れ
読んだあとにも残る問い『高瀬舟』8相手の事情を聞くことで変わる見方

穏やかな話ばかりではありません。怖い場面や重い場面が苦手なときは、各作品の「読む前のひとこと」も参考にしてください。

1. 『蜘蛛の糸』短い物語の中で、心の動きを追う

著者:芥川竜之介

極楽を歩く御釈迦様が、池の下にある地獄へ目を向けます。そこには、かつて一度、蜘蛛を助けたことのある男がいました。静かな極楽の風景と、苦しむ男のいる場所とが対比されるところから始まります。2

誰が、どこで、何を望んでいるのか。それを追いながら、まず一つの物語を読み通したいときに向いています。先へ進んだら、男が周りをどう見ているかにも注意してください。

教訓を一言でまとめる前に、登場人物の気持ちが動いた箇所を確かめてください。知っている話でも、あらすじでは伝わらない風景の描き方に気づくはずです。

読む前のひとこと: 地獄や苦しみの描写があります。短い話ですが、明るく楽しい話を読みたい日には向きません。

『蜘蛛の糸』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

2. 『手袋を買いに』初めての場所へ向かう、子狐の目線で

著者:新美南吉

雪で遊んで手を冷たくした子狐のために、母さん狐は手袋を買ってやろうと考えます。しかし、人間の町へ近づくにつれて、母親は以前の怖い経験を思い出します。やがて子狐は、一人で買い物に向かうことになります。3

お使いの行方と一緒に、母さん狐が知っている世界と、子狐がこれから知る世界の違いを追ってください。同じ町の明かりが、二匹には違って見えています。

雪のまぶしさ、冷えた手、遠くの灯り。身近な感覚から物語に入れるのも、この作品のよさです。

読む前のひとこと: 結末だけでなく、子狐が何に驚いているかを楽しんでください。親子の会話に目を向けると、子どもの頃とは違う読み方ができます。

『手袋を買いに』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

3. 『注文の多い料理店』「おかしいな」と思う瞬間を楽しむ

著者:宮沢賢治

山で道に迷った二人の紳士が、食事のできそうな店を見つけます。店には扉がいくつもあり、進むたびに新しい案内が出てきます。二人はその言葉に従いながら、奥へ向かいます。4

読みどころは、読者が引っかかる点と、二人が納得してしまう理由とのずれです。「本当にそういう意味だろうか」と思いながら読むと、短い案内文の一つひとつが気になってきます。

会話と動きのある場面から読書に入りたい方に向いています。店の仕組みや結末は、ここでは伏せておきます。

読む前のひとこと: 少し怖い話ですが、二人の会話には滑稽さもあります。どちらを強く感じるか、確かめてみてください。

『注文の多い料理店』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

宮沢賢治をもう少し読みたくなったら、短い作品から『銀河鉄道の夜』へ進む読書案内もあります。

4. 『檸檬』出来事より、感覚の変化を読む

著者:梶井基次郎

理由をうまく言えない重苦しさを抱えた「私」が、京都の街を歩いています。以前は好きだったものにも心が向かなくなっている中で、ある日、一つの檸檬を買います。5

大きな事件を期待するより、色、冷たさ、匂い、重さを、文章と一緒に感じながら読む作品です。同じ街を歩いていても、何を手にしているか、どんな気持ちかによって見え方が変わります。

一つの果物が語り手にとってどんな存在になるのか。題名の意味を解説で確かめる前に、まずその手触りを追ってください。

読む前のひとこと: 文章が短くても、読んだ気持ちをすぐ言葉にできるとは限りません。「この感じは分かる」と思える一節が一つ見つかれば十分です。

『檸檬』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

5. 『鼻』気にしないふりをする人の、気になるところ

著者:芥川竜之介

僧侶の禅智内供は、長い鼻に悩んでいます。けれど、気にしていると周りに知られるのも嫌なのです。鼻の長さだけでなく、自分がどう見られているかが、心から離れません。6

外見を笑う話として読むより、気にしていることを隠したくなる気持ちや、人の反応を確かめずにいられない様子を追ってください。遠い昔の話なのに、身に覚えのある自意識が見つかるはずです。

本人の願いと、周りの接し方は一致しない。そのずれに興味がある方におすすめです。

読む前のひとこと: 外見をめぐるからかいが登場します。笑えるかどうかだけでなく、誰が何を気にしているかにも目を向けてください。

『鼻』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

6. 『羅生門』追い詰められた人の、考えの変化を追う

著者:芥川竜之介

雨の降る夕方、一人の下人が荒れた羅生門の下にいます。主人から暇を出され、戻る場所も明日の暮らしの当てもありません。これからどう生きるかを考えながら、その場から動けずにいます。7

注目したいのは、下人が何をしたかより、行動する前にどんな理屈をたどるかです。自分に言い聞かせる理由は、周りの状況とともに変わっていくのでしょうか。

雨や夕闇、建物の様子も読み飛ばさないでください。下人の行き場のなさと重ねると、場面の緊張がいっそう伝わってきます。

読む前のひとこと: 死体や暴力など、重い描写があります。人の選択について考えたい日に向いた作品です。気持ちを和ませたい日は、別の一作を選んでください。

『羅生門』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

7. 『高瀬舟』相手の話を聞くことで、見方が変わる

著者:森鴎外

罪人の喜助を護送する庄兵衛は、同じ舟に乗った男の様子を不思議に思います。喜助は、これから罰を受ける人とは思えないほど、穏やかな表情をしているのです。庄兵衛が、その心持ちを尋ねるところから対話が進みます。8

相手を分かったつもりでいても、その人の暮らしや事情を聞くと、最初の印象では捉えきれなくなる。庄兵衛の戸惑いに寄り添って読むと、短い会話の中に何度も立ち止まりたくなります。

「十分に持っている」とはどういうことか。他人の行動をどこまで理解できるのか。結論を急がず、問いを持ち帰る読書をしたい日に開いてください。

読む前のひとこと: 貧困や死、罪をめぐる重い話です。答えを出そうとせず、人物の話に耳を傾けるつもりで読んでください。

『高瀬舟』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

「人気作」と「自分に合う作品」は、分けて考える

今回の選出に使ったのは、2022年1月1日〜12月31日のXHTML版アクセスランキングです。『羅生門』5位、『注文の多い料理店』12位、『蜘蛛の糸』13位、『檸檬』14位、『手袋を買いに』24位、『高瀬舟』27位、『鼻』31位という順位を参考にしました。1

同名の別版が載っている場合、ここでは上位側に掲載された作品名と順位を参考にしています。別版のアクセス数は合算していません。また、リンク先の本文はランキング上の版と同じとは限らず、図書カードで新字新仮名であることを確認した版を選んでいます。9

青空文庫の集計は作品ファイルへのアクセスで、同じIPアドレスから同じファイルへのアクセスを24時間ごとに1回と数える方式です。読了人数や、現在の検索需要を示す数字ではありません。10

ランキングは作品を探すきっかけにとどめ、最初の一作は好みで決めてください。一作読んで疲れたら、そこでやめてかまいません。

短編を読むときに、全部分かろうとしなくていい

今回リンクした版は新字新仮名ですが、現代語訳ではありません。古い生活習慣や、なじみのない言葉も出てきます。9

分からない語のたびに止まるより、まず場面を追い、話の流れに関わる言葉だけを確かめれば十分です。読み終えて冒頭へ戻ると、最初は気づかなかった言葉が目に留まることもあります。

短編だからといって、速く読み終える必要はありません。一つの風景や会話が心に残れば、それで十分です。

気になった一作を、青空文庫からBlueReaderへ

「青空文庫で読む」リンクなら、そのままブラウザで本文を開けます。試し読みだけなら、EPUBへの変換やBlueReaderへの登録は要りません。

自分の読書環境で読みたい場合は、図書カードからテキストZIPを保存 → 青空→EPUBで変換 → 生成したEPUBをBlueReaderへアップロード → サーバーでの解析後に読む、という流れです。変換したEPUBは手元にも残してください。11

青空文庫をEPUBに変換してBlueReaderで読む方法

少し不穏な物語や謎解きをさらに読みたい方は、江戸川乱歩を青空文庫で読むための5作品もどうぞ。まずは今回の7作品から、冒頭を読んでみたい一作を選んでください。


Footnotes

  1. 青空文庫「XHTML版アクセスランキング(2022年通年)」。当時の掲載順位を参照。この記事は青空文庫が公式に選定した短編7選ではありません。 ↩ ↩2

  2. 芥川竜之介『蜘蛛の糸』、青空文庫。冒頭の極楽と地獄、男の過去と気持ちの描写を参照。 ↩ ↩2

  3. 新美南吉『手袋を買いに』、青空文庫。雪の朝、母狐の心配、子狐が町へ向かう場面を参照。 ↩ ↩2

  4. 宮沢賢治『注文の多い料理店』、青空文庫。料理店を見つけ、扉の案内に従って進む場面を参照。 ↩ ↩2

  5. 梶井基次郎『檸檬』、青空文庫。冒頭の心情、京都の街歩き、檸檬の感覚を描いた箇所を参照。 ↩ ↩2

  6. 芥川竜之介『鼻』、青空文庫。内供の悩み、周囲を気にする様子を参照。 ↩ ↩2

  7. 芥川竜之介『羅生門』、青空文庫。冒頭の雨と門、職と行き場を失った下人の思考を参照。 ↩ ↩2

  8. 森鴎外『高瀬舟』、青空文庫。舟上の喜助と庄兵衛、暮らしや金銭についての対話を参照。 ↩ ↩2

  9. 青空文庫の図書カード:蜘蛛の糸(No.92)、手袋を買いに(No.637)、注文の多い料理店(No.43754)、檸檬(No.424)、鼻(No.42)、羅生門(No.127)、高瀬舟(No.45245)。文字遣い、XHTMLとルビありテキストZIPを確認。新字新仮名は表記の区分で、現代語訳を示すものではありません。 ↩ ↩2

  10. 青空文庫「アクセスランキング」。集計対象と同一IP・同一ファイルの数え方。 ↩

  11. BlueReader「青空文庫をEPUBに変換してBlueReaderで読む方法」。変換とBlueReaderへの追加は既存ガイドを参照。 ↩

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