BlueReader

EPUB READING GUIDE

『人間失格』を読む前に|三つの手記と語り手を整理する、ネタバレなしのガイド

太宰治『人間失格』を初めて読む方へ。「はしがき」と三つの手記の関係、序盤の読み方、語り手との距離を整理。結末や人物の行く末は明かしません。

『人間失格』には有名な一文があります。しかし、青空文庫の本文を開くと、その前に別の声で書かれた「はしがき」があります。読書の最初の手がかりは、この声の違いです。

この記事では、物語の結末や登場人物の行く末を説明せず、構成と冒頭の読み方を案内します。作者の生涯を調べたり、あらすじを最後まで追ったりする必要はありません。まず、いま誰の言葉を読んでいるのかを確かめます。

最初から最後まで、一人だけが語る本ではない

青空文庫の本文は「はしがき」「第一の手記」「第二の手記」「第三の手記」「あとがき」という区分で読めます。第三の手記の中にも区切りがあります。1

区分読み始めに押さえること
はしがき写真を見た人物が、男の印象を語る
三つの手記葉蔵の側から経験や感覚が語られる
あとがき手記の外側の語りへ戻る。内容は読後に確認する

「はしがき」と「あとがき」は、飛ばしてよい出版者の説明ではなく、作品の構成の一部です。初読では、あとがきを先に開かず掲載順に読んでください。

はしがきでは、写真より「写真を見る人」にも注目する

冒頭の語り手は、男の三枚の写真について印象を述べます。笑顔などを見ながら、強い言葉で評価しています。1

この判断を、作品が読者に示す客観的な診断と受け取る必要はありません。「写真に写っているもの」と「見た人がそこから感じたこと」を分けて読みます。同じ顔を見ても、別の人が同じ説明をするとは限りません。

男の正体や結末を急いで知ろうとせず、自分もその見方に誘導されていないかを確かめる。そのうえで手記へ進むと、外から見える姿と内側の言葉の距離が、最初の問いになります。

第一の手記では、分からなさを具体的に読む

手記の語り手は、人間の暮らしが分からないと話し、子どもの頃の経験を挙げます。停車場の設備や食事の時間など、日常のものが本人には別の仕方で感じられています。1

「孤独な人の話」とまとめる前に、どの場面で周囲とのずれを感じているかを一つずつ確かめてください。見えている行動と、本人がそこへ結びつける意味が一致しないところがあります。

共感できても、語り手のすべてが自分と同じわけではありません。理解しづらい感覚があっても、読めていないとは限りません。自分の経験と重なる点、重ならない点は、そのまま残しておけば十分です。

道化を、明るい性格の一言で片づけない

人を笑わせようとするふるまいは、外から見た楽しさと、本人が説明する動機とを分けて読む手がかりです。1

誰かが笑った場面で、「笑わせることに成功した」という出来事と、「本人が安心できたか」という気持ちが同じかどうかを考えます。答えを先に決めず、その都度言葉を確かめてください。

ただし、現実の人にも同じ理由があると一般化しないでください。作品の一人の語りを読むことと、身近な人の性格や状態を判定することは別です。作者本人へも、登場人物の言葉をそのまま当てはめずに読みます。

人物が増えてきたら、関係だけを小さく記録する

第二、第三の手記へ進むと、新しい人物や場所に出会います。全員のその後まで載った相関図を先に見るより、読んだ範囲だけで関係を整理するほうが迷いません。

メモは「名前/どこで出会ったか/葉蔵がどう話しているか」の三項目で十分です。最後の欄は人物の本質ではなく、葉蔵の受け止め方です。後で違う印象になったら、最初のメモを消さず、横へ書き足すと変化が見えます。

手記が三つだから一つで全体の三分の一、といった読み時間の見積もりもしないでください。区分の数と、文章量や読む負担は別です。

重い内容から距離を取りたいとき

作品には自死、依存、性暴力などに関わる重い内容があります。最後まで読み切ることを自分に課す必要はありません。つらさが強い日は閉じる、別の作品を読む、あとで戻るという選択ができます。1

「名作だから強い感情で受け止めなければ」と考えず、文章の一箇所に注意を向けるだけでも読書です。読後の感想も、登場人物に賛成したかどうかの二択ではありません。印象が変わった表現を一つ書き留めておけば足ります。

読み終えたら、最初の声へ戻る

最後まで読んだあと、はしがきの写真の説明をもう一度読んでみてください。最初は確かな説明に見えた言葉の印象が、変わっているかもしれません。どこが変わったのか、なぜ変わったのかを考えてください。

次の太宰作品を探すときは、『人間失格』以外のおすすめ5作品へ。人物の内面をもっと読みたいのか、違う調子の語りを聞きたいのかを選ぶ入口になります。

本文を開く・EPUBで読む

『人間失格』を青空文庫で読む / 図書カード・本文・配布情報

冒頭だけなら、そのままブラウザで読めます。続きをEPUBで読みたい場合は、青空文庫のテキストZIPを青空→EPUBで変換し、BlueReaderへアップロードしてください。サーバー解析を経て本棚から開く流れは変換ガイドで説明しています。2

読む前に一つだけ覚えておくなら、「今の言葉を話しているのは誰か」。その問いを持って、最初の三枚の写真へ進んでください。

次の読書につながる記事

長期ランキングから選ぶ青空文庫

途中で止まった本との付き合い方


Footnotes

  1. 太宰治『人間失格』、青空文庫。本文、図書カード No.301。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  2. BlueReaderの青空文庫EPUB変換ガイド。青空→EPUBによる変換、EPUBのアップロードとサーバー解析、同じアカウントでの読書継続について。 ↩

入手したEPUBをBlueReaderで読む

EPUBを本棚へ追加し、サーバーでの解析後にブラウザから開けます。

ログインしてEPUBを追加する