江戸川乱歩を読んで、青空文庫でもっと謎のある物語を探したくなった。それなら、同じ雰囲気の本だけでなく、別のやり方で読者を引き込む作家にも手を伸ばしてみてください。
今回は大阪圭吉、小酒井不木、甲賀三郎、浜尾四郎の5作品を紹介します。短編が四つ、少し長く付き合う長編が一つです。犯人や仕掛けを当てるだけでなく、目撃談の聞き方、場所の描き方、語り手をどこまで信じるかにも目を向けます。
乱歩のどんな面白さを、もう少し読みたい?
| 関心 | 作品 | 入口 |
|---|---|---|
| 見たことと解釈のずれ | 銀座幽霊 | 向かいの店を見ていた人々 |
| 怪異と推理の間 | 灯台鬼 | 濃霧の中の灯台の異変 |
| 不穏な人物の語り | 三つの痣 | 法医学者が話す、自分の痣の由来 |
| 日常の中に生まれる緊張 | 琥珀のパイプ | 暴風雨の夜の夜警 |
| 長く一つの事件を追う | 殺人鬼 | 人物と手がかりを重ねる長編 |
怪談めいた題名でも、それだけで中身を決めつけないでください。紹介は、どの作品も事件や語りの入口までにとどめます。
1. 大阪圭吉『銀座幽霊』窓越しに見えたことは、何を意味するか
銀座裏の煙草店と、その向かいのカフェ。近い距離にある二つの店から、住む人や働く人の様子が互いに見えます。女主人たちの関係に不穏さが増し、カフェの女給たちが事件の目撃者となるところから謎が動きます。1
読者も向かいの店から眺めているつもりで、「直接見たもの」と「見た人がそう考えたこと」を分けて読んでください。人物の関係が分かったつもりになると、その後の光景まで同じ筋で説明したくなります。
手がかりを細かく追う楽しみと、夜の街の空気が同居しています。乱歩の『D坂の殺人事件』で、店の外から観察する場面が気になった人には、次の一作にちょうどよいはずです。
『銀座幽霊』を青空文庫で読む / 図書カード・本文・配布情報
2. 大阪圭吉『灯台鬼』人の来にくい場所で起こる異変
濃い霧の夜、汐巻灯台の灯が突然消えます。近くの臨海試験所に勤める語り手たちは、異変を知って灯台へ向かいます。それ以前から灯の出方をめぐる奇妙な噂もあり、場所そのものが不安を帯びています。2
灯台の仕組みや建物の位置関係は、雰囲気づくりのためだけに書かれているわけではありません。説明が出てきたら、頭の中で大まかに配置してみてください。精密な図は要りません。何がどこから見えるかがつかめれば十分です。
噂と現場で分かったことを分けておくと、話の聞こえ方が変わります。暗い場所や死を含む場面があるので、穏やかなパズルを期待して選ぶと戸惑うかもしれません。
3. 小酒井不木『三つの痣』説明する人を、どこまで信じるか
法医学者が、自分の頬にある痣の由来を話し始めます。話は職業を選んだ動機にまで及び、彼が語る自分の姿にも不穏な影が差してきます。3
知識のある人物の話だからといって、その自己説明までうのみにする必要はありません。何を先に説明し、何を余談として片づけるのか。語りの順序も手がかりです。
死体や解剖、他人の苦痛への関心が語られるため、身体に関する描写が苦手な人には強く感じられるかもしれません。また、作中の医学観や心理の説明は当時の小説のものであり、現在の専門知識として受け取るものではありません。
『三つの痣』を青空文庫で読む / 図書カード・本文・配布情報
4. 甲賀三郎『琥珀のパイプ』いつもの当番が、不安な夜に変わる
東京の大地震のあと、夜警の当番を引き受けていた語り手。物語は、暴風雨になりそうな夜、できれば避けたい役目に向かうところから始まります。4
事件だけを追うより、夜警を面倒がる日常の感覚から入るのがおすすめです。身近な不満として聞いていた声が、どこから緊張を帯びるのか。その変化を味わう作品です。
題名の品物が出てくるのを待ちながら、相手の言葉と語り手の判断を分けて追ってください。震災後の描写や当時の言い回しは、あくまで小説の中のものとして読んでください。
『琥珀のパイプ』を青空文庫で読む / 図書カード・本文・配布情報
5. 浜尾四郎『殺人鬼』一つの謎に、もう少し長く付き合う
短編では物足りなくなったら『殺人鬼』です。ここまでの四篇のように短時間では読めません。人物や情報を積み重ねながら進む長編です。5
登場人物を一度に覚えようとせず、「誰が誰を知っているか」「その情報をどこから得たか」を簡単にメモしておくと、間が空いても戻りやすくなります。名前だけの一覧より、事件との関わりを一言添えるほうが役立ちます。
解決を当てられなくても、読み方を間違えたわけではありません。自分が確信した箇所を覚えておき、読み終えてからその根拠を見直すのも楽しみの一つです。後半の展開や犯人には触れません。
次の一篇を選ぶ順番
まず短く試すなら、目撃の謎が気になる人は『銀座幽霊』、不穏な告白が好きなら『三つの痣』へ。場面を頭の中で組み立てたい人は『灯台鬼』、長い事件に腰を据えたい人は『殺人鬼』が向いています。
同じ作者を続けて読むのもよいのですが、一篇ごとに別の作者へ移ると、説明の仕方の違いがはっきりします。「誰が正しいか」を探す前に、その話をどんな声で聞いているかにも耳を澄ませてください。
EPUBで持ち歩く場合
図書カードから本文をブラウザで開くのと、ファイルを保存するのとは別の操作です。BlueReaderで読みたい作品だけ、テキストZIPを青空→EPUBで変換してください。生成したEPUBをアップロードし、サーバー解析後に本棚から開きます。6
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Footnotes
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大阪圭吉『銀座幽霊』、青空文庫。本文、図書カード No.1269。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩
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大阪圭吉『灯台鬼』、青空文庫。本文、図書カード No.1259。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩
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小酒井不木『三つの痣』、青空文庫。本文、図書カード No.48054。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩
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甲賀三郎『琥珀のパイプ』、青空文庫。本文、図書カード No.1429。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩
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浜尾四郎『殺人鬼』、青空文庫。本文、図書カード No.1799。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩
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BlueReaderの青空文庫EPUB変換ガイド。青空→EPUBによる変換、EPUBのアップロードとサーバー解析、同じアカウントでの読書継続について。 ↩