夏目漱石の『こころ』を読みたい。でも、あらすじを調べた途端に、最後まで分かってしまいそうでためらう。
この記事で扱う人物と場面は、「上 先生と私」の冒頭だけです。先生の過去や物語の核心には触れず、後半の人物を含む相関図も載せません。
秘密を解こうとするより先に、「私」がなぜ先生に近づきたくなるのかを追ってみてください。
まずは、この三人が分かれば読み始められる
| 序盤の人物 | いま知っておけばよいこと |
|---|---|
| 「私」 | 先生との出会いを振り返って語る人。出会いのころは学生だった |
| 先生 | 「私」が鎌倉で出会い、そう呼ぶようになる人物 |
| 先生の奥さん | 東京で「私」が先生を訪ねたときに会う人物 |
冒頭で示される情報を整理したものです。「先生」という呼び名だけから、学校で授業を受ける教師と生徒の話だと決めつけないほうが、本文の関係を追いやすくなります。1
名前を覚えるより、誰が誰について話しているかに気をつけて読むと迷いません。知らない人物が出てきても、人物一覧を検索するのは後回しでかまいません。
最初の舞台は鎌倉。出会いを急がず読む
「私」は友人に誘われて鎌倉へ出かけますが、友人が先に帰り、一人で過ごすことになります。その場所で、先生との出会いが描かれます。1
ここで大きな事件は起きません。読みどころは、「私」がなぜこの人を気にかけるのかです。交わした言葉だけでなく、相手を目で追う様子や、声をかけるまでの間にも、二人の関係が表れています。
何か分かった気がするのに、本当のところは分からない。その感覚を抱えたまま先へ進めば十分です。
東京に戻ってからは「近づきたい」と「入っていけない」を見る
「私」は先生の家を訪れるようになります。会う回数が増えても、先生のことを何でも知っているわけではありません。話すこともあれば、答えが短くなる話題もあります。1
たとえば、質問をしたあとに先生が何と言ったかだけでなく、「私」が次の質問をしたのか、やめたのかも読んでみてください。
親しくなることと、相手の事情を知ることは同じでしょうか。結末を当てるための問いではありません。会話を丁寧に読むための問いです。
「先生はこういう人」と早く決めない
静かな人、近づきにくい人、不親切な人。序盤だけでも受け取り方は分かれます。
印象が固まりかけたら、どの言葉からそう感じたのかを一つ確かめてください。先生の発言なのか、「私」が先生について述べた評価なのか。それを分けるだけで、次の場面の読み方が変わります。
読者は「私」の目を通して先生を見ています。本文に書かれていることと自分の想像を分けておくと、あとで印象が変わったときに、その変化も楽しめます。1
語り手は、出会いの瞬間と同じ場所にはいない
この小説の冒頭では、「私」が先生の記憶を呼び起こして語っていることが示されます。つまり、出会ったときに感じたことと、あとから振り返る言葉が、一つの文章の中にあります。1
先のことを知っているような表現に引っかかっても、検索で確かめる必要はありません。振り返って語っているからだと受け止めて、場面の続きを追えば足ります。
分からないまま読むのは失敗ではありません。先生を理解できないまま会い続ける語り手と、同じ位置に立てる時間です。
最初の読書は、こんなふうに区切る
「一日に何章」という目標は立てなくて大丈夫です。最初は鎌倉での出会いまでを一区切りにし、別の日に先生の家を訪ねるあたりを読む。番号付きの節は、再開するときの目印になります。2
読み終えたときのメモも、あらすじである必要はありません。
今日分かったこと:____。
まだ分からないが、続きを読みたいこと:____。
「先生が何を考えているか分からない」の一行でも十分です。答えを出すためではなく、次に本を開く理由を残すためのメモです。
古い言葉で止まったときは
初めて読む言葉が出てきたら、その言葉が分からないと場面がつかめないのか、細かな表現だけが分からないのかを分けてみてください。
場面がつかめないなら調べる。会話の流れが追えているなら印を付けて先へ進む。すべての語を調べる読み方も間違いではありませんが、そのせいで先へ進めないなら、調べる語を絞ってください。
文字が小さくて読みにくいなら、作品が合わないと判断する前に表示を調整してみてください。BlueReaderの設定項目はデフォルト読書設定ガイドで確認できます。
先に読まなくてもよいもの
終盤までの詳しいあらすじ、全人物の関係図、先生の過去を説明する解説は、初読の準備に必須ではありません。この記事で挙げていない人物の名前は、検索しないでおくのが安全です。
ただし、作品には死や自死、人間関係をめぐる重い内容があります。そうした内容を避けたい方は、ネタバレを気にするより先に確認してください。気分が乗らない日は、別の本を読めばいいのです。2
本文を開いて、最初の一節から
自分の読書環境で続けたい場合は、テキストZIPを青空→EPUBで変換し、生成したEPUBをBlueReaderへアップロードします。サーバー解析後に本棚から読み、同じアカウントで端末を変えて続きを開けます。3
読み切れるか心配なら、読書時間を自分のペースで見積もる記事も参考にしてください。とはいえ、予定が立たないうちでも、先生と「私」が出会う場面から読み始められます。