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EPUB READING GUIDE

石川啄木は何から読む?歌集二冊と評論二篇の入り方

『一握の砂』『悲しき玩具』の三行書き短歌を数ページずつ読む方法と、評論『時代閉塞の現状』『弓町より』の読みどころ。一首ずつ解釈せずに読む区切り方、旧仮名とルビの見え方、内容上の注意をまとめ、青空文庫の本文と図書カードへ案内します。『ローマ字日記』が未収録である点にも触れます。

石川啄木の名前と、教科書で見た三行の短歌は知っている。でも歌集を一冊開くと、何百首も並ぶ中でどこを読めばよいのか分からず、一首ずつ意味を取ろうとして疲れてしまう。

この記事では、青空文庫で読める歌集二冊と評論二篇を取り上げます。歌集は『一握の砂』と『悲しき玩具』、評論は『時代閉塞の現状』と『弓町より』です。短歌については、全部を解釈しようとせず、数ページずつ区切って読む方法を中心に書きます。1234

なお、よく名前の挙がる『ローマ字日記』は青空文庫に収録されていないため、この記事では扱いません。

今の気分に近いのは、どれから?

読みたいもの最初の候補はじめに注目すること
短いものを少しずつ一握の砂三行の切れ目と、ルビの多さ
暮らしの中の小さな出来事悲しき玩具句読点と記号の使い方
当時の若者の考え方時代閉塞の現状「我々」が誰を指すか
詩人が詩を疑う文章弓町より比喩で語られる経歴

四篇のうち、歌集二冊は新字旧仮名、評論二篇は新字新仮名のファイルです。歌集では「たはむる」「出でにき」のような旧仮名遣いが残りますが、ほとんどの漢字にルビが付いているので、声に出して読む分には困りません。

1. 『一握の砂』まず献辞と自序を読み、章の名前を見る

歌集を開くと、歌の前に短い献辞と自序があります。献辞は函館の友人二人に向けたもので、生まれてすぐに亡くなった子どもへの言葉も添えられています。自序には、明治四十一年夏以後の千余首から五百五十一首を選び、五つの章に分けたと書かれています。この二つを読むだけで、どんな状況で編まれた本かが分かります。1

五つの章は「我を愛する歌」「煙」「秋風のこころよさに」「忘れがたき人人」「手套を脱ぐ時」です。「煙」と「忘れがたき人人」はさらに一と二に分かれます。章名を先に眺めておくと、どこで休んでも位置が分かります。

青空文庫のファイルでは、一首が三行に分けて表示されます。冒頭の一首は「東海の小島の磯の白砂に」で始まり、次の行で「われ泣きぬれて」と続きます。行が変わる場所が、作者が置いた切れ目です。五七五七七の形に数え直す必要はなく、三行の呼吸で読んでみてください。ルビは「頬(ほ)」「蟹(かに)」のように、短い言葉にもこまめに付いています。

読み方としては、一日に数ページ、具体的には十首から二十首ほどで止めるのを提案します。五百首を超える歌集を一晩で通読しようとすると、どの歌も同じに見えてきます。読んだ範囲で、もう一度見返したい一首だけを決める。歌の意味を説明できなくて構いません。砂、ピストル、墓といった物が目に残れば、それが次の章へ進む手がかりになります。

『一握の砂』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

2. 『悲しき玩具』句読点のある短歌を、日記のように読む

『一握の砂』より後に刊行された歌集です。こちらにも三行書きが使われていますが、見た目はかなり違います。「呼吸すれば、胸の中にて鳴る音あり。」のように、歌の途中に読点と句点が入り、二行目や三行目の頭が一字下がる歌もあります。ダッシュや感嘆符が使われる歌もあり、文字の並びが散文に近づいています。2

題材は、勤め先を休んで河岸をさまよう、夜ふけに果物屋を探す、子どもの玩具の機関車を走らせてみる、本を買いたいと妻に言ってみる、といった暮らしの中の場面です。一首が、その日の出来事を一行か二行で書いた日記の断片のように読めます。

『一握の砂』と同じく、数ページで区切ってください。こちらは分量が少ないので、一回に読む首数を減らし、同じ歌を翌日に読み返す余裕を取るほうが向いています。句点のあとに何が置かれているか、一字下がった行で声の調子がどう変わるか。表記の違いをそのまま読みの手がかりにしてみてください。

中ほどから後半にかけて、病院や医者、薬といった言葉が歌に増えていきます。重い場面もありますが、歌の言葉自体は短く、日常の物に寄り添っています。

『悲しき玩具』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

3. 『時代閉塞の現状』短歌の作者が書いた、硬い評論

副題は「強権、純粋自然主義の最後および明日の考察」です。本文は一から五までの五節に分かれ、新聞の文芸欄に載った魚住氏の論文「自己主張の思想としての自然主義」への応答として始まります。3

冒頭から「自然主義」「強権」「国家」といった言葉が続き、歌集の軽さを期待して開くと驚くかもしれません。しかし読み進めると、話題は当時の青年がどんな気持ちで国家や試験制度、徴兵検査と向き合っているかという身近な場面へ降りてきます。「我々」という語が誰を指して使われているかを追うと、論の筋が見えやすくなります。

論文の相手である魚住氏の文章は青空文庫で読めないため、前提を全部つかもうとしないでください。啄木が何に反対し、代わりに何を求めると言っているかだけを拾えば、評論としての骨は読めます。短歌を先に読んでいると、歌の中の「かなしみ」と、ここで語られる「悲しみ」の違いも比べられます。

『時代閉塞の現状』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

4. 『弓町より』詩をやめた人が、詩について語る

「食うべき詩」という題で始まる詩論です。初出は明治四十二年の東京毎日新聞で、三行書きの歌集二冊より前に書かれています。啄木が十代のころ詩を作っていたこと、やがて作れなくなったこと、北海道の函館、札幌、小樽、釧路と職を求めて移ったことが、本人の言葉で語られます。4

書き出しは、手に持った蝋燭の蝋が減っていくという比喩です。段落のあいだには波線の区切りが置かれ、回想と主張が交互に進みます。主張の中心は、題名のとおり「食う」ことと切り離せない詩を求めるというもので、空想を重ねて風景を飾っていたころの自分の作り方を具体的に振り返っています。

歌集を読む前に開くと、なぜ三行書きで日常の場面が歌われているのかを考える手がかりになります。歌集を先に読んだ人は、歌の中の北海道の地名がここで散文として現れることに気づくでしょう。評論二篇のうち、どちらか一つだけ読むならこちらのほうが短く、文章も柔らかいです。

『弓町より』を青空文庫で読む / 図書カード・ダウンロード

読む前に知っておきたい内容上の注意

『一握の砂』の献辞には、生後すぐに亡くなった子どもへの言葉が含まれます。歌集二冊には、死、病気、貧しさ、家族への感情を詠んだ歌が多く、特に『悲しき玩具』は中ほどから病床の歌が続きます。12

『時代閉塞の現状』には、当時の社会状況を論じる中で、女性の立場や徴兵、教育の格差について現在とは異なる言葉で書かれた箇所があります。評論として読むときは、作者の主張と当時の語彙を分けて受け取ってください。3

歌集を数ページずつ読むために、EPUBに変換する

本文リンクで冒頭の数首を試し、続きを手元の端末で読みたくなったら、図書カードからテキストZIPを入手します。青空→EPUBで変換し、生成されたEPUBをBlueReaderへアップロードしてください。サーバーでの解析後に本棚から開けます。短歌は一首ごとの行が短いので、縦書きにしてルビの大きさを調整すると、三行の形がそのまま見えます。5

手順は青空文庫をEPUBに変換してBlueReaderで読む方法にまとめています。同じアカウントなら端末を変えても続きを開けるので、十首読んで閉じ、翌日に別の端末で次の十首を読むという進め方ができます。

短歌から入るのに抵抗がある人は、正岡子規の入門記事で随筆から短歌に触れる道もあります。短歌ではなく詩のほうが気になるなら、詩を読まない人のための青空文庫7篇が入口になります。


Footnotes

  1. 石川啄木『一握の砂』、青空文庫。本文、図書カード No.816。新字旧仮名。献辞、自序、五章の構成と三行書きの表示を参照。 ↩ ↩2 ↩3

  2. 石川啄木『悲しき玩具』、青空文庫。本文、図書カード No.815。新字旧仮名。句読点付きの三行書きと題材の確認に参照。 ↩ ↩2 ↩3

  3. 石川啄木『時代閉塞の現状』、青空文庫。本文、図書カード No.814。新字新仮名。副題と五節の構成、冒頭の論点を参照。 ↩ ↩2 ↩3

  4. 石川啄木『弓町より』、青空文庫。本文、図書カード No.818。新字新仮名。「食うべき詩」の構成と初出の確認に参照。 ↩ ↩2

  5. BlueReaderの青空文庫EPUB変換ガイド。青空→EPUBによる変換、EPUBのアップロードとサーバー解析、同じアカウントでの読書継続について。 ↩

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