青空文庫で林芙美子を探すと、『放浪記(初出)』と『新版 放浪記』が見つかります。「新版」の方だけを選べばよいのか、それとも同じ本文を別の名前で公開しているのか。
二つは重複ファイルではありません。本文の段階と収録範囲が異なります。まず、どの時点の本文をどの範囲まで読めるかを図書カードで確認してください。この記事では初出版No.45649と新版No.1813の二つを対象にします。12
二つの図書カードを見比べる
| 確認する点 | 『放浪記(初出)』 | 『新版 放浪記』 |
|---|---|---|
| 図書カード | No.45649 | No.1813 |
| 文字遣い | 新字新仮名 | 新字新仮名 |
| 版を選ぶ手がかり | 雑誌「女人藝術」連載時の本文 | 改稿後の第一部・第二部と第三部 |
| 底本 | 『作家の自伝17 林芙美子』 | 新潮文庫『新版 放浪記』 |
| 冒頭で見える違い | 日付の付いた語りに入る | 「放浪記以前」から始まる |
二つとも新字新仮名です。違うのは仮名遣いではなく、収録する本文の段階と構成です。12
『放浪記(初出)』は、雑誌に現れた本文を読む入口
図書カードNo.45649では、「女人藝術」に掲載された本文を読めます。底本に記載された本の刊行年と、もともとの雑誌掲載の時期は、別の情報として見てください。1
「初出」は、後の版より正しい、価値が高いという意味ではありません。発表時の形に関心があるときに選ぶ目印です。
改稿の違いを調べなくても、日付に沿って語りが進む一冊として読めます。その日の仕事や食事、お金への思いがどんな調子で書かれているかを、まず味わってください。
『放浪記(初出)』を青空文庫で読む / 図書カード・本文・配布情報
『新版 放浪記』は、収録範囲を確かめて選ぶ
No.1813の図書カードでは、改稿後の第一部・第二部に第三部を加えた作品だと説明されています。「新版」は、文字を読みやすく置き換えただけの版という意味ではありません。2
こちらの冒頭には「放浪記以前」が置かれています。過去を振り返る語りに触れてから、その後の生活へ進む入り方になります。同じ『放浪記』でも、語りの入口が違います。
迷ったら、まず新版の冒頭を開いてください。雑誌掲載時の文の運びに興味があるなら初出版へ。これは読み方の提案で、どちらかだけが本物というわけではありません。
『新版 放浪記』を青空文庫で読む / 図書カード・本文・配布情報
初めて読む人は、全文の差分を追わなくてよい
二つのページを並べると、一字一句を比べたくなるかもしれません。ただ、最初の読書でそこまでする必要はありません。
どちらかを選び、語り手がどのように生活を受け止めているかを追ってください。改稿を研究するのと、一作品として読むのは別の楽しみです。もう一方は、あとから読めば十分です。
読み比べるなら、対応する一場面に絞ってください。出来事の順番、語りの切れ目、説明されることと省かれることを確認します。違いを見つけても、作者の心理や改稿の理由まですぐに断定しないようにします。
読み始める前に、記録しておくと役立つ三項目
残しておきたいのは、作品名、図書カード番号、底本の三つです。どちらの本文を読んだかが分かれば、ほかの読者と話すときにも混乱しません。
紹介記事や感想に違和感を覚えたら、読み違いを疑う前に版の違いを確かめてください。途中で別の版に移ると、同じ場所を探すのに手間取ります。その場合は章や節の見出しを手がかりにします。
この案内では全文を機械的に照合した差分一覧までは作っていません。図書カードの版の説明と、それぞれの冒頭をもとに、選ぶための違いを整理しています。
EPUBにする場合も、選んだ版を保つ
二つの図書カードにはそれぞれのファイルがあります。選んだカードのテキストZIPを入手し、青空→EPUBで変換してください。変換しても、新版と初出版が一つにまとまるわけではありません。
生成したEPUBをBlueReaderへアップロードし、サーバー解析後に開いたら、冒頭と目次を見て意図した版か確かめます。元のZIPとEPUBを図書カードの情報と一緒に残しておけば、あとで区別できます。3
版を選ぶ目的は、正解を当てることではなく、自分がどの文章を読んでいるかを把握することです。先を読みたくなる方の冒頭から開いてください。
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Footnotes
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林芙美子『放浪記(初出)』、青空文庫。本文、図書カード No.45649。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩ ↩2 ↩3
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林芙美子『新版 放浪記』、青空文庫。本文、図書カード No.1813。作品の紹介と表記・版の確認に参照。 ↩ ↩2 ↩3
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BlueReaderの青空文庫EPUB変換ガイド。青空→EPUBによる変換、EPUBのアップロードとサーバー解析、同じアカウントでの読書継続について。 ↩